一般社団法人日本ワークルール検定協会に「啓発推進委員会」という新たな組織が発足しました。この委員会は、ワークルール検定を今後、より広く普及、啓発していくために結成されたもので、そのメンバーは、労働法学の専門家や弁護士、厚生労働省OB、経営者団体や労働組合の役員OBなど多彩な方々です。
働く人たちだけでなく、経営者・管理者、学生など、多くの方々にワークルールを広めていくため、大きな力となっていただけることと思います。
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浅倉むつ子(早稲田大学名誉教授)
私は早稲田大学の法学部や法科大学院で、ジェンダー法と労働法を教えていたこともあり、ワークルール検定については、道幸先生の著書などから、とても有意義な活動だと思っていました。
大学で教えていると、ほとんどの学生がアルバイトをしており、労働法の授業の後などに相談にくることがありますが、首をかしげるような相談が多く、ほとんどルールが守られていない実態があるようです。企業の側の人事管理をする人たちもまた、もっと知識を積んでおけば、防げる紛争が多いようにも思います。すべての人が市民性の涵養という意味でワークルールを知っている社会が必要だと痛感します。
私自身は、女性労働問題がずっと関心事だったので、「働く女性のワークルール」をもっと職場に行き渡らせたいと考えており、こうした視点からもワークルールを広げる活動に関われることを嬉しく思っています。 -
浅沼弘一(金属労協事務局長)
ワークルールは、働く人にとっても、働いてもらう側にとっても、大切な約束ごとです。これを知らないで働く、あるいは、働いてもらうというのは、ライセンスなしに車を運転するようなものであると言っても過言ではないと思います。
ワークルール検定は、そういう意味からも、大切な約束事を知っているということの証となります。また、単なる看板となるだけに留まらず、研修の要素も含まれているため、独学では得にくい知識を得ることができるところにも特徴があります。
このところ、働き方の多様化が進んでおり、それにまつわるトラブルも増えつつあると聞いています。自由な働き方や様々な雇用の形態は、働く側にとっても、働いてもらう側にとっても、メリットが期待できる反面、これまでの常識では解決できないようなケースに遭遇することもあるもしれません。そのような場合でも、ワークルール検定で得たものを土台として、働く側にとっても働いてもらう側にとっても、よりよい環境を作り上げていくことができると確信します。 -
安西 愈(弁護士)
道幸先生がワークルール検定をやっていることはよく知っていました。
東京には3つの弁護士会があって、それぞれに労働関係の委員会があります。そして、その3つの弁護士会が共同で委員会を作り、毎月1回集まっています。この委員会での報告として、東京弁護士会より、大学への出前授業をやっていて、主に大学の就職担当者へ案内状を送っており、今年度は5校で実施し、来年度も4校で実施の予定ということで、出前授業への関心が高まっているように感じています。講師とテキストが大変だということで、今後3弁護士会共同の事業としたいという話があります。
これまでの出前授業では、「ブラック企業の見分け方を教えてほしい」という質問に、講師からは対応に困ったという報告もありましたが、大学生のワークルールへの関心は高まっています。この頃では学生だけでなく親も関心を持っており、ワークルールの普及は大事なことだと思っています。 -
石田 眞(早稲田大学名誉教授)
私は、早稲田大学で労働法を教えておりました。ワークルールに関しては、毎年、道幸先生が書かれた『15歳のワークルール』という大変良い本を法学部の労働法ゼミの学生に読ませて感想文を書かせていました。学生達は、自分のやっているアルバイトの労働条件について、道幸先生の書かれているワークルールに照らして問題点を探り出すことになりますが、学生達は驚くほどワークルールについて知りません。
そこで、ワークルール検定が始まったと聞き、ゼミの学生に問題をやらせてみたのですが、労働法のゼミであるにもかかわらず、出来はそれほど良くありませんでした。特に問題だと思ったのは、ある問題の答えが正しかったとしても、その答えがなぜ正しいのを聞いてみると、その理由をうまく説明できないというのが実情です。ですので、ワークルール検定に関しては、何問正解したのかだけでなく、なぜある選択肢が正しくて、他の選択肢が間違っているのかをじっくり考えさせると、同検定も労働法の勉強の大変良い素材になると思っております。 -
上西充子(法政大学教授)
長時間労働や違法・不当な扱いへの若者の警戒心は高まっています。アルバイトにおける不当な扱いに対しても、厚生労働省の啓発も進んできました。「うちは、こうなっているから」という論理で不当な扱いを続ける職場には、人は集まらない状況になっていることを、雇う側には認識していただきたいです。学生バイトや新入社員を受け入れて実際に仕事の指示をする若手社員にまでワークルールがきちんと浸透するよう、ぜひ職場でこの検定を活用してみてください。
学生の皆さんにもワークルール検定「初級」に挑戦してみてほしいと思います。知識は現状を変える力となります。働くことへの不安を不安のままにとどめない、不当な扱いを我慢しない、その一歩を踏み出すきっかけに、この検定がなればと願っています。 -
大福真由美(元電機連合書記長)
私の見立てとして、当世労働組合のおかれた状況は危ういのではないか、と思っています。それは、労働組合への役割期待が希薄化しており、その信頼性、信義性をよくよく心して高めていかないと、その存在意義が問われかねないからです。
一方、雇う方も雇われる方も、労働組合のあるなしに関わらず、働く上でのワークルールの存在や知識レベルは、お互い一定のレベルを保持していなければならない時代になったと、最近つくづく感じています。
そうした意味で、ワークルール検定「初級」テキストでもけっこう難しい部分もありますが、自らをプロテクトする力をつける上で、チャレンジしていただく必要性があるものと強く感じています。
連合の初代事務局長、(故)山田精吾氏の言葉、「志は高く、目線は低く」を今改めて思い出し、私も働く人々の目線からワークルールの啓発推進にむけたお手伝いができればと思っています。 -
氣賀澤克己(元中央労働委員会事務局長)
私は、以前、厚生労働省に勤務し、労働基準法や労働組合法などの法律の改正や運用の仕事に携わってきましたし、不当労働行為等の労使紛争の解決の仕事にも携わってきました。それらの経験から、現在の社会でも解雇や賃金、不当労働行為等に関する紛争がいかに多いかを実感しました。こういう紛争を未然に防止したり円満に解決したりするためには、まずは労使の関係者が各種の労働法(判例を含む)を十分理解して対応していくことが重要だと思います。近年では、新しく法律が制定・改正されたり重要な判例が提出されたりし、その内容も広範・複雑になってきており、そのことがますます重要になってきております。ワークルール検定は、自身の労働法(ワークルール)に関する知識を確認し、さらにそれを高めていく良い機会であり仕組みであると思いますので、これが広く普及していけばいいと思っています。
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澤田潤一(公益財団法人 日本生産性本部業務執行理事)
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい――
夏目漱石「草枕」冒頭の有名な一文です。
職場は、性別や年齢、出身地が異なる人が集まる場所です。趣味や趣向、考え方、能力も様々で、自分では「当然」と思ったことが、職場では「受け入れられない」ということは、よくあります。本当に住みにくい。
だからこそ、みんなが「ワークルール」を共有し、互いを尊重し合うことが大切だと思います。互いに認め合っているからこそ、遠慮なくモノが言い合える……そんな関係ができたら素敵ではないでしょうか。
職場は、他の人から知識や技術を学び、自分を成長させることができる場です。力を合わせることで、一人ではできなかった事をできるようにする場でもあります。どういう職場にするかは、そこにいる人たち次第です。
是非、みんなでワークルール検定に挑戦してみてください。きっと役に立ちますから。 -
鈴木俊男(前ILO理事:使用者側代表)
私は以前、在日のドイツ系企業から、日本の労働法がわかりにくいので、説明してくれと言われたことがあります。在日の外資系企業で働く外国人は、決して無知な人ではなく、わかっていて、わかりにくいというのが日本の労働法だと私自身は感じていました。
ワークルール検定では、啓蒙の1つの矛先として、外資系企業に働く外国の人がわかるようにする努力も必要ではないでしょうか。外国の人も視野に入れ、ワークルール検定では、現場に沿って、タテ・ヨコ・ナナメで設問を考えていくことが大切だと思います。
ワークルールには、人が組織の中で働くという根本問題が含まれていて、アルバイト学生の質問などは、外資系企業の経営者の質問とよく似ています。今後の展開に期待し、自分としても積極的に関わっていきたいと思っています。 -
田川博己(元JTB会長)
啓発推進委員をお引き受けしたのを機に、ワークルール検定「初級」テキストを参考書にして、昨年11月の初級検定問題にチャレンジしてみました。う~ん、なかなか手ごわい問題でした。
昨今、働くことに関するルールを定めた労働法に対する理解が、従業員だけでなく経営者や管理者側も不足しているといわれます。労使双方がワークルールを理解し、遵守して働く環境を整え、労使のコミュニケーションを円滑にすることは企業運営にとってきわめて重要です。
ワークルールを社会に広め、定着させていくうえで、このワークルール検定がその一助になることを期待していますし、普及に何らかのお手伝いができればと思っています。 -
南雲弘行(元連合事務局長)
連合の関係団体の1つ、教育文化協会で仕事をさせていただいています。教育文化協会では、一橋・埼玉・法政大学などで寄付講座を開講させていただいています。私もこの講義に参加するなかで、これまで学生の皆さんには連合に寄せられた労働相談の事例を紹介していましたが、これからは初級テキストの内容も紹介しながら、ワークルールの啓発推進の一助にしたいと思っています。
この4月から前期講座が開講しますので、ワークルール検定のピーアールも含めて、啓発・推進にあたっていきたいと考えています。 -
西谷 敏(大阪市立大学名誉教授)
私の専門はドイツの労働法ですが、初めてドイツに留学した1975年当時、いろいろ驚きがあった中の一つが、本屋に行くと、「法律入門」というような本が山積みとなっていて、普通の市民が当たり前に買っていたこと、また、日常会話でも法律のことがでてくる場面に、法文化の違いを感じたことです。
日本に欠けているのは、こうした法文化ではないでしょうか。例えば大学の法学部では、リーガルマインド(法律の実際の適用に必要な柔軟かつ的確な判断力)を身に着けさせることを目標としていますが、うまくいっていません。私は、そうした問題とこのワークルール検定がうまく結びつけばいいなと思っています。ワークルール検定という試験は、入り口としては有効な手段だと思いますが、リーガルマインドを涵養していくという視点が大切ではないか、そういう立場から啓発・推進に努力してみたいと思います。 -
長谷川真一(元ILO駐日代表)
私は、ILOでの仕事に携わる前に、厚生労働省に長く務め、労働基準法や労働組合法の所管課長をやっていました。そうした仕事柄、労働組合関係者とのつきあいも長く、ワークルール検定の普及に協力してほしいとの声かけがあって啓発推進委員を引き受けました。
ILOで仕事をしていたときに、マスコミの人から、「あなたの仕事はディーセントワークを流行語大賞にすることだ」と言われ、一生懸命やってきましたが、残念ながら実現していません。今度は「ワークルール」を世の中に広めることができるよう、啓発推進委員の一人として努力したいと思います。 -
平田美穂(中小企業家同友会全国協議会事務局長)
中小企業家同友会は「よい会社、よい経営者、よい経営環境」を目的に、1957年に東京で任意団体として創立されたのが始まりです。その後1969年、全国組織として中小企業家同友会全国協議会が設立され、現在では47都道府県で会員数合計47,000名を超えました。「経営者の経営者による経営者のため」の自主・自立の組織で、会の財政は入会金、会費を中心とした会員からの収入でまかなわれています。
基礎組織である支部や地区で、年間5,000回の月例会などが開かれており、1975年に中同協が発表した「中小企業における労使関係の見解」(http://www.doyu.jp/org/material/doc/roushi1.html)を学びながら、「人間尊重経営」をめざし、「働く環境づくりの手引き」なども作成して、企業づくりの活動を行っています。
企業経営にとって労働関係法規の順守は大前提になりますから、ワークルールの周知と普及の促進は、中小企業経営者自身にとっても大切です。本委員会に参加することで学びを深めるとともに、弊会の「人を生かす経営」の取り組みへの理解を広げていきたいと考えています。 -
宮里邦雄(弁護士)
以前、会長を務めていた日本労働弁護団がいま重要な活動目標としていることに、消費者教育推進法にならって、「ワークルール教育推進法」をつくることがあります。過労死防止法を作るのに20年近くかかっていますので、そう簡単ではありませんが、法制化をめざし、また、それを作る過程を通じて、ワークルールを普及していく運動を進めていきたいと思っています。
私は、長年の弁護士活動を通じ、ワークルールが守られない理由は、労使双方にあると思っています。もちろんワークルールを守るべき基本的な責任は使用側にありますが、労働者側の無知も背景にあり、そういう意味ではワークルールというのは、決して使用者側だけの問題ではなく、労使双方の問題でもあります。
この委員会に、労働側の弁護士である私と経営法曹の安西弁護士が入っているのも、そういうことだと思います。日本の企業社会にワークルールを浸透させるため、お役に立てればと思っています。 -
村木厚子(元厚生労働事務次官)
私は、津田塾大学で、社会課題の解決やキャリア開発について授業を持っています。今の学生は、社会に出ることや働くことについてとても大きな不安を抱えています。「ブラック企業」や「過労死」といった報道がたくさんあることがその原因のようです。
働く場には法律で決められた「ワークルール」があること、違反を取り締まってくれる人たちや相談に乗ってくれる人たちがいることを、しっかり伝えることが大事だと思います。
また、より良いワークルールを創っていくためには、働く人が声を上げることが大事だということも伝えたいと思います。そのためにも、ワークルールを広める活動のお手伝いをしっかりとしていきたいと思います。