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学生のための ワークルール入門[第6版]
誰もが経験する労働トラブル。
学生の経験に基づく具体的な設問に、専門家が分かりやすく答えます。
自分を守り仲間を守る法律知識を身に着けよう。
パートやアルバイトのと正社員との差別を禁止する「法改正」も紹介する改訂版。
「相談の仕方」や「相談窓口」も分かる。- 編 者
- 淺野高宏(北海学園大学教授・弁護士)
NPO法人 職場の権利教育ネットワーク - 著 者
- 上田絵理(弁護士)
加藤智章(北星学園大学教授)
川村雅則(北海学園大学教授)
菅野淑子(労働保険審査会委員)
國武英生(小樽商科大学教授)
倉本和宜(弁護士)
迫田宏治(弁護士)
白 諾貝(弁護士)
林健太郎(慶応大学専任講師)
開本英幸(弁護士) - 定 価
- 770円(税込)
- 出版社
- 旬報社
- ISBN
- 9784845118830
- 出版年月日
- 2024/03/18
- 備 考
- ◆はじめに――バイトで泣かないためのお守りレシピ集
多くの学生のみなさんにとって、最初の就労体験は、アルバイトでしょう。アルバイトをはじめることで、これまでとは違った発見や新しい人間関係が生まれ、自分自身の成長を実感できるという方も多いと思います。
他方、職場では、学校と違い、自分と同じ年齢層の仲間だけでコミュニケーションをとるだけでは済まないことも多いでしょう。多様な年齢層の職場の同僚、上司、あるいは顧客と対応することが必要となります。多くの人たちと協働する体験は仕事の面白さを知る契機となります。また、喜びの源泉でもあります。ただ、ときとして職場内で軋轢が生じてしまい、思い悩む学生がいるのも事実です。
その悩みの内容が、学業と両立ができないくらいヘトヘトになって必要な単位もとれないかもしれないとか、アルバイト先の先輩などからハラスメントを受けて精神的に病んでしまいそうといった場合には、すぐにでも次のアルバイト先を見つけることでトラブルから抜け出すのが合理的な行動ではあります。ただ、みなさんも想像してみてください。仕事は楽しい、職場の先輩や同年代のアルバイトとの人間関係も良好、家から職場も近く勉強とアルバイトを両立するには職場の立地も良い。けれど、店長の人の好さに流されて、ついつい頼まれ仕事を断り切れずサービス残業が多くなってしまっている。これだと労働時間に見合ったアルバイト料がもらえていないので、モヤモヤした気持ちばかりが募ってしまい、せっかくの人間関係まで壊れてしまいそうですね。あるいは、時折、店舗に巡回に来るエリアマネージャーの態度だけが問題(店長やアルバイトに対する指導態度が横柄で、気に食わない態度をとると激昂する)なので、仕事は続けたいけれど、エリアマネージャーの巡回日が近づくと働く意欲がわかなくなって辞めてしまいたくなるetc、このような経験をしている方は少なくないでしょう。こんなとき、アルバイトの立場では、何もいえず、我慢するか、辞めるかの二者択一しかないのでは、あまりにも悲しいですね。
でも、みなさんが法的に正しい知識をもち、それを職場のみんなと共有できれば、法律に則った形で労働条件や職場環境をよりよく変えることも可能です。そのためには、学生のみなさん、一人ひとりが①モヤモヤする問題の正体を発見・認識し、②関連する法的ルールを把握し、③これを解決するための権利実現の手立てを知ることが不可欠です。これは、仕事を辞めずによりよい職場を実現するために必要なレシピを知ることだと言い換えることもできます。
本書は、ワークルール教育の先駆者である道幸哲也北海道大学名誉教授の遺志を継ぐ、門下生を中心に執筆しました。執筆者は、小樽商科大学、北海学園大学、北星学園大学、慶応義塾大学などで労働法や社会保障法を教えている教員のほか、労働保険審査会委員を務めている学識経験者、さらに北海道で労働事件や労働相談を多く受け持っている弁護士によって構成されています。日頃から学生とふれあい、北海道内を中心とした労働紛争の実態をよく知る専門家が、学生が遭遇しがちなトラブル事例をもとにQ&A方式で、わかりやすくワークルールを解説しているのが特徴です。
ぜひ、本書をフル活用して、学生のみなさんが、ワークルールの知識を踏まえて行動できる能力を身に着けていただければと思っています。